質乃蔵(しちのくら)の児玉です。
日本に古くからあることわざの中には、一見ではその意味がわからないものがたくさんあります。
例えば「秋茄子は嫁に食わすな」「牛に引かれて善光寺参り」などがそれにあたるでしょう。
今回は「女房を質に入れてでも」という表現について考察します。
目次
「女房を質に入れてでも」という語を含むことわざといえば、「初鰹(はつがつお)は女房を質に入れても食え」。このことわざができたのは江戸時代とされています。
初鰹とは、4月から6月ごろに獲れる鰹です。当時初鰹は縁起物とされており、非常に高級な魚でした。初鰹は現代の貨幣価値からいうと約20万から40万円という法外な値段がついていたともいわれています。
吉原に運ばれた千両箱3個分の値が付いたということ話があるほどです。
初鰹は吉原に運ばれたことからも分かるように、庶民には到底手の届かない魚でした。当時の江戸っ子たちの間には、初物を食べることによって75日間長生きできるというジンクスが流行っており、ナスなどの野菜でも初物がもてはやされていました。
高価な魚として珍重されていた鰹は、初物を食べれば75日間の10倍の750日間も長生きできるといういい伝えがあり、このことから法外な高値で取引されるようになったのです。
初鰹が売られる時期になると、江戸中が鰹売りの到着を心待ちにしていました。しかし庶民が簡単に買える値段ではありません。そのため「もし初鰹を手に入れられる機会があるのならば、女房を質に入れても食え」ということわざが生まれたと考えられます。
なお、初鰹ではなくとも、鰹売りが町へ来れば庶民はこぞって買いました。青魚である鰹は傷みやすい魚ですが、江戸時代には現代のような高速の輸送手段や冷凍技術はありません。
そこで初鰹はもちを良くするために表面を炙り、消毒の意味も兼ねたにんにくやショウガなどの薬味を添えたタタキとして食べられていました。
それでも傷んだ鰹にあたってしまい、体調を崩す庶民もいたと言われています。江戸の人々にとって鰹は、そのような思いをしても食べたい人気の魚だったのです。
「女房を質に入れてでも」とありますが、実際に質屋で女房つまり「人」を買い取れたのでしょうか。もちろん質屋で人を買い取ることはできません。
これは「女房を質に入れるような人はいない」ということを前提としたジョークです。「もうこれ以上質草(質屋へ売る物品)が無いほどだ。あとは女房を入れるしかない。」という誇張表現と考えられます。
一方で、江戸時代には女房を入れてお金を借りることのできる「遊郭(ゆうかく)」はありました。遊郭へ女房を売り渡した場合は「質に入れる」ではなく、「身売り」などと表現されるのが一般的です。
しかし、もし「女房を遊郭に売ってまで初鰹を食べたい」という江戸っ子がいたとしても、やはりただのジョークでしょう。
「女房を質に入れても~」という表現は、マンガにも登場します。「キン肉マン」に出てくる「アデランスの中野」というプロレスの実況解説者は、「女房を質に入れても~」が口癖でした。
例えば「女房を質にいれてまで見にきたかいがあった」や「女房を質に入れても見に行かなあきまへん」など、ざっと確認できるだけでも10回以上「女房を質に入れても~」と言っているのです。
ただし、もちろん実際に女房である「公子さん」を質に入れたことはありません。
なお、キン肉マンの作者である「ゆでたまご」先生は、自身の公式サイトで「女房を質に入れても見たくなるサイト」という表現をしています。「女房を質に入れても~」という慣用句は、キン肉マンでよく知られている代表的なセリフともいえるのです。
「女房を質に入れても~」という慣用句はありますが、もちろんジョークや誇張表現です。江戸時代も現代も、質屋へ人を入れてお金を借りることはできません。
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