質乃蔵(しちのくら)の児玉です。
金相場はドル円為替と密接な関係があります。特に円安になると金相場が上がる傾向がありますが、なぜそうなるのか理解していない人も多いかもしれません。
今回は、円安だとなぜ金相場が高騰するのか、その理由を詳しく解説します。
目次
為替相場の歴史は戦後から続いた固定相場から始まります。長く1ドル=360円の時代が続いた後、1973年から完全な変動相場に移行して以来、円の価値は日本経済の成長に比例して上昇してきました。
2011年に一時は1ドル=75円にまでになった円ですが、その後はやや円安の傾向にあります。
円と相対する通貨である(ここではドル)は常にどちらかの価値が高くなれば、一方の価値が下がる関係にあります。
実は、為替は輸出入に関わるビジネスをしていない人にも、海外旅行に行かない人にも、また投資をしていない人にも密接な関係があるのです。
為替は、世界の経済状況などに影響を受けて日々刻々と変動します。そのレートによって、ガソリン、食料品や輸入品の価格が上下します。多くの日用品を輸入に頼っている日本では、生活レベルで為替の影響を受けざるを得ないといえるでしょう。
ドル円為替の変動にはいくつかの要因があります。輸出入されるモノやサービスの動向、海外旅行者の増減などに加え、より影響があるのは投資の動きやアメリカの金利や株価です。
ここのところの円安ドル高の直接的な原因は、アメリカの金利が上昇傾向にあるためとみられています。
円安とは、他の国の通貨に対する円の相対価値が下がることです。たとえばドルを例にとると、1ドル=100円だった状態から120円になると、ドルの価値は上がり、円の価値は下がったことになります。一見円が上がったようにみえますからまぎらわしいですが、それまで100円で購入できたものが120円必要になったと考えればわかりやすいでしょう。
逆に1ドル=100円から80円になった場合は、円の価値が上がりますから円高になります。
円安になる原因は一つではありません。
日本からの輸入の拡大や日本から海外への旅行者の増加も円安を招く一因ではありますが、特に大きな原因として挙げられるのがアメリカの金利です。
アメリカの金利が上昇し、アメリカの景気がよくなれば、ドルの価値も上がります。ドルの価値が上がるとアメリカの株価に投資する人が増え、相対的に円の価値は下がって円安になるというわけです。
円安にはどんなデメリットがあるでしょうか。ドルの価値が上がり、円の価値が下がるということは、海外からモノを買うときに以前より多くお金を払わなくてはいけないことを意味します。
つまり円安は輸入関連産業にとっては大きな痛手になるのです。
また円を外貨に換金する際のレートが下がるため、円安のときに海外旅行に行くとあまりお得感がないでしょう。
他にはガソリン価格の高騰、輸入商品の値上げなどが円安のデメリットとして挙げられます。
反対に円安のメリットにはどんなことがあるでしょうか。
輸出関連産業にとっては日本のモノが安くなると円安はメリットです。輸出品の値段が安くなれば海外での価格競争力が高まります。
また外貨を扱う投資にとっても円安はチャンス。外国株式や外国債券の資産価値が上がるからです。
円安のメリットにはもう一つあります。円安になると金相場は上がるのです。円の価格変動と金相場の価値変動には密接な関係があるのです。
2011年までは超のつく円高が続き、金相場も4000円台にとどまっていました。その後、2012年12月から始まった「アベノミクス」では円安が促進され、3年後の2015年にはドルが80円台から123円台にまでに急騰。この急激な円安にともない、国内の金相場は5,000円近くまで上昇しました。
世界の金相場とは異なり、日本における金取引相場は「金の世界相場」の動きよりもドル円為替相場の影響が反映されることが多いのが特徴です。
ですから、日本国内で金の売買をする場合は、現在のドル円為替相場の状況を十分に把握しておく必要があります。
なぜ日本では円安だと金相場に影響がでるのでしょうか。それは、日本における金の取引状況が諸外国と比べて少し特殊だからです。
日本でももちろん金の価格は世界市場の金相場と連動してはいますが、それ以上に円安が金相場に与える影響は大きいといえます。
世界市場では金の売買はドル建てで行われるのが基本。その点、日本だと金の売買はまずドルを円に換えてからの取引になるため、ドル円為替相場が金の価格変動に大きく関係してくるのです。
そのため、世界市場の金価格が下降傾向にあるときでも、日本では円安で金価格が上昇するということもあり得ます。
金の売買のタイミングには金相場そのものが上がったときがありますが、円安のときも金を売るチャンスです。
日本では円安になると金の価格は上昇傾向がみられますから、金を売って利益を出したいのであれば円安の時期がおすすめです。逆に金を購入するには円安の時期は適していません。
金は「有事の金」と言われるように、いざという時に頼れる実物資産です。だからこそ、売買のタイミングをまちがって損をしたくないですよね。円安で金相場が上昇するメカニズムをしっかり理解し、売るタイミングを見極めましょう。
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