質乃蔵(しちのくら)の児玉です。
金でありながら白い輝きを見せるホワイトゴールドは、結婚指輪などにも使われる金属です。しかし、このホワイトゴールドを用いた製品は、製造や販売が中止されることがしばしばあることをご存じでしょうか?
今回は、ホワイトゴールドがなぜ販売中止になりやすいのか、その理由について詳しく解説します。
ホワイトゴールドは、ゴールド(Au)に銀やパラジウムなどといった白色金属を割金(わりがね)として使っている合金です。
ホワイトゴールドと同じ色をしているプラチナは日本では「白金」と呼ばれているため、プラチナとホワイトゴールドを混同する人も多いようですが、両者は全く異なる金属とうことをご存知でしょうか?
ホワイトゴールドの刻印は「White Gold」の頭文字を取って「WG」と表記されるのが一般的で、例えば18金のホワイトゴールドは「K18WG」などと刻印されます。
第一次世界大戦やロシア革命により、プラチナの供給が大幅に減少した際に代替えとして開発されたパラジウム系ホワイトゴールドは、日本ではプラチナが欲しいけれど高過ぎて手が出ないという人たちの間で人気を博しました。
なお日本では、銀色に輝く高級な貴金属としてプラチナが宝飾品に使われていますが、ヨーロッパでは、プラチナは宝飾品として使われることはごく稀で、代わりにホワイトゴールドが普及しています。
このようにホワイトゴールドは人気が高い傾向にありますが、製造や販売が中止されることが珍しくありません。その理由は「金相場の高騰」と「加工」です。それぞれについて次でご説明します。
ホワイトゴールドの製造・販売が中止になる理由のひとつは、金の価格が高騰したため、ホワイトゴールドを含む金製品の製造が抑えられたこと。2014年まではプラチナの価格が金の価格を上回っていましたが、2015年を境に逆転します。
プラチナは金よりも埋蔵量がはるかに少なく、希少価値の高い非金属です。プラチナはロシアと南アフリカを主な産出国としており、1トンの原石からわずか3グラムしか採掘することができません。しかも、プラチナを採掘するには8週間の日数が必要とされると言われています。
実際にゴールドの年間産出量が約4,000tであるのに対し、プラチナは200tほど。人類が採掘してきたゴールドの量は推定で約160,000t、一方のプラチナは約30分の1の約5,100tとなっています。このように希少価値の高いプラチナは、長い間ゴールドよりも高値で取引をされていました。
しかし近年プラチナは、宝飾の素材以外に自動車産業で素材として使用されることが多く、自動車の売れ行きが悪いと価格が下がるようになりました。
一方、バブル崩壊やリーマンショック、それから新型コロナなどの影響から資産としての金が注目されるようになり、金の価格が上昇していくのです。
急上昇していった金の価格は2015年でプラチナよりも上がり、2020年に至っては金1グラムの平均価格は約6,000円、プラチナは約3,000円となっています。
ホワイトゴールドのほとんどがメッキ加工をされていて、加工に手間がかかることも流通が滞る理由です。
ホワイトゴールドのメッキに使用されるのはロジウム(Rh)と呼ばれる貴金属。薄い膜でホワイトゴールドをコーティングするため、指輪やペンダントなどといったジュエリーが摩耗するのを防げます。
また、見た目をプラチナに似せるためにもメッキが施されます。元来、ホワイトゴールドというのはプラチナと見比べるとやや暗くて黒っぽい、鉛のように少し落ち着いたトーンをしています。
このホワイトゴールドにメッキ加工を施すことにより、プラチナにより近い明るい銀白色を出せるのです。
ホワイトゴールドにはメッキ加工が不可欠なのですが、やはり手や肌と接触し続けるとメッキがはがれてしまいます。美しさと強度を保つためには、再度メッキ加工を施さなければなりません。
このとき「一度メッキをすべてはがし、一からメッキ加工しなおす」という手間がかかってしまうのです。
ホワイトゴールドが販売中止になりやすいもうひとつの理由は、加工が難しいということにあります。
ホワイトゴールドに限らず、イエローゴールドやピンクゴールドなどは、一般的にプラチナよりも加工が難しい素材といわれており、特にホワイトゴールドは研磨する際に「巣」が出やすいというデメリットがあります。
巣とは、内部に空洞が発生し、金属表面にボツボツと穴が空いた状態になってしまうこと。ホワイトゴールドはその素材の特性から、「ゴマ巣」と呼ばれる巣の集合体が出やすいのです。
研磨に熟練した職人であれば巣を出さずにきれいに仕上げられます。しかし上手に研磨ができなかった製品は、納品をしても返品される率が高くなってしまうのです。
一旦返品されてしまうと、工場や工房では指示された箇所を修正し、メーカーに再度送らなくてはいけません。
時間・労力・費用のロスが多くなってしまうため、ホワイトゴールド製品の製造を辞めてしまうのです。
ホワイトゴールドは、金相場の高騰と加工の手間という理由から、製造や販売中止されることがあります。しかし国内外にはプラチナよりもホワイトゴールドが好きな人が多いため、一定の需要が見込めるでしょう。
もう使わないホワイトゴールドのジュエリーをお持ちでしたら、流通量が下がったタイミングを狙って売ってみてはいかがでしょうか。
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