質乃蔵(しちのくら)の児玉です。
私たちは、毎日当たり前のように紙幣や通貨を使用していますが、これらは厳密に言えばただの紙や金属でしかありません。では、なぜ商品などと交換できるのでしょうか。
それは、紙幣や通貨が金と同様の価値を持っているからです。今回は、金本位制と通貨管理制度について詳しくご説明します。
目次
金本位制とは、「金」を軸にしてそれぞれの国が通貨価値を定める制度のこと。国が保有する金の量と同量の「兌換(だかん)紙幣」を発行し、兌換紙幣はいつでも金と交換できることを政府が保証します。それだけに兌換紙幣は、製造される金額にリミットが設けられているのです。
金本位制が法的に実施されるようになったのは、1816年のイギリス。いわゆる金貨が交易に使われていた時代です。世界で交易がすすむにつれて、金貨は大量に持ち運ばなければならず、少額の取引がしづらいといった問題が生じるようになりました。
そんなときにイギリスが貨幣法を制定し、1822年にソブリン金貨(Sovereign)を国内唯一の無制限法貨として認めたのです。こののち、世界各国で金本位制が取り入れられ、20世紀の始めごろまで主流となっていました。日本では従来から銀本位制度が採用されていましたが、1897年の日清戦争の賠償金をきっかけに、金本位制がスタートします。
しかし1930年代に入ると、多くの国で金本位制が廃止。その理由としては、第一次世界大戦や1930年の世界恐慌によるによる金輸出の禁止が挙げられます。この金本位制度の代わりに、新しく採用されるようになったのが「通貨管理制度」です。通貨管理制度では、金の保有量にかかわらず、政府が自国の経済に合わせて流通貨幣量を管理します。
金本位制は全世界で共通の価値を有することになるため、各国での取引がスムーズになるというメリットがあります。そのため、戦争や恐慌などで中断されつつも、1971年まで続いてきました。
デメリットは、金の保有量が、信頼や経済活動に大きく影響すること。取引で支払いが増えるほどその国の金の保有量が減るため、世界の普遍的な基準として敷くのには問題があったのです。
金本位制をとっている国では、政府が保有する金の量によって貨幣の発行が左右されるので、日本などのように長い間銀本位制を採用してきた国では、制限が大きくなることが懸念されていました。
金本位制の一番のメリットは、世界のあらゆる地域で普遍の価値を持つ金を基準にして通貨量を安定することができる点にあります。国際的な価値の通貨が安定すれば、貿易収支の概算が立てやすくなり、輸出入が盛んになるのです。
1816年にイギリスで金本位制が始まったのも、同国の産業革命がきっかけでした。イギリスは産業革命によって大量生産が可能になった商品を世界各国に輸出し、大儲けをしようと考えたのですが、信用度のない外国通貨を得ても経済的なプラスにはなりません。
そこでイギリスは、金本位制の仕組みを自国イギリスだけではなく、輸出する相手国にも採用すれば間違いなく利益を得られると予想。まずはイングランドなど近隣へ定着させ、自国の植民地であったインドなどへ広げます。このようにイギリスでスタートした金本位制は、世界各国に広がり、日本でも1897年に明治政府がこの制度を採択しました。金本位制の確立と産業革命によって、イギリスの貿易は世界的に拡大したのです。
金本位制の「国の経済規模がどんなに大きくなったとしても、自国の保有量以上は通貨が発行できない」という点は、デメリットです。しかもこのデメリットは、一部の国にとっては大きなダメージになり得ます。
輸出量が多ければ多いほど他国の通貨(すなわち金)を得ることができ、自国の保有量を増やせます。一方、輸入が増えると、通貨が輸入国に持っていかれるため、国の金の保有量は減少していくということです。
輸出量よりも輸入量の方が多い国が金本位制をとっていると発行できる通貨量が減少し、経済活動が止まってしまう恐れがあります。このことから、万国に通用する貨幣制度ではないといえるでしょう。
金本位制のもう一つのデメリットは、金が希少価値の高い金属だということです。国際的に見て、金の絶対量は常に不足しているので、金本位制に頼っていると、多くの国では経済発展が難しくなってしまいます。
日本で初めて金本位制が導入されたのは1871年です。「黄金の国ジパング」と呼ばれた日本ですが、その呼び名に反して古くから銀本位制度が敷かれており、金本位制導入後も貿易決済には銀を用いていました。
世界的に金本位制が確立されたあおりを受けて、日本でも金本位制を本格的に採用したのは1897年のこと。しかし、1917年には第一次世界大戦のために金輸出を禁じ、1931年の末に金本位制を停止しました。その後は1942年の日本銀行法により、日本は金本位制から管理通貨制度へと移行します。
世界でも金本位制から徐々に脱却していく国も見られましたが、フランスやアメリカなど一部の国では細々と続いていました。1971年にアメリカの「金・ドル本位制(米ドルと金の交換制度)」を停止したことで、金本位制の時代は終焉を告げたのです。
現在日本で現在採用されている通貨管理制度では、金の保有量とは全く無関係に日本銀行が貨幣の量を管理。通貨管理制度の場合、国の信用度がお金の価値を決定しますので、国の経済に対する信頼が低下すれば貨幣の価値低下につながりますし、信頼が上がると貨幣の価値も上がるというわけです。
金は価値の上がり下がりも激しく、常に価格が変動していますのでこれに頼らずに通貨管理制度を敷いたほうが、より安定した経済基盤を築くことができるといえるでしょう。世界各国の経済は災害や火事による環境破壊などといった、さまざまなファクターの影響を受けており、金の所有量だけでは豊かさを測れない時代に突入しています。
金本位制という制度が確立するほど、金の価値は世界的に認められていました。そのため、金を資産として保有している一般人も少なくありません。円やドルの価値が下がると金の相場が上がる傾向にあるため、タイミングを狙って売ってみてはいかがでしょうか。
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