質乃蔵(しちのくら)の児玉です。
金製品は日常的に目にしていても、金がどのように採掘されているのかを知っている人は少ないでしょう。現在、日本で金が採掘されている鉱山は菱刈鉱山のみだからです。
今回は、金がどのような場所でどのように採掘されているのかについてご紹介します。
金鉱脈を発見する方法は大きく分けて2つあります。ひとつは砂金の採れる川を探すこと、もうひとつは塩素を多く含む温泉地を探すことです。
一般に、砂金の多い川で見つかった金は「川金」、浅熱水性金銀鉱床の金は「山金」と呼ばれています。また、塩素の多い温泉地には「浅熱水性金銀鉱床」が潜んでいることが多く、この鉱脈を掘っていくうちに金が発見されることもあるのです。
川底の中に砂のように細かい砂金が発見された場合は、上流に位置する金鉱山から風雨などによって削り取られた金が流れ着いたものと考えられます。そのため、上流に行けば金鉱脈を発見できる可能性があるのです。
砂金は蛇行している河川の流れの内側や、大きな岩の下、岩盤に根を下している草の根元などに溜まりやすい傾向が見られます。日本で砂金が見つかりやすいスポットとして、北海道に多く、浜頓別(はまとんべつ)町の「ウソタンナイ砂金採掘公園」、中頓別(なかとんべつ)町の「ペーチャン川砂金堀体験場」、大樹(たいき)町の「カムイコタン公園」などが有名です。
火山活動によって形成された鉱山は、地中から地表に向かって上昇したマグマが、地下水などで冷却されることで形成されます。このようにしてできるのが熱水金銀鉱床です。
熱水金銀鉱床の代表的な例は、歴史的にも有名な新潟県の佐渡金山。1601年に開山し、佐渡奉行所では小判の製造なども行われていました。機械化が進められて拡大発展を遂げた佐渡金山は、資源が枯渇したことにより、1989年に操業休止となったのです。
また、熱水金銀鉱床の中でも、浅熱水性鉱床は地表近くに形成されます。そのため、火山に近い温泉地の周辺で、この浅熱水性鉱床が発見された例も少なくありません。
浅熱水性鉱床の特徴は、金や銀の含有率が高いことです。例えば、鹿児島の菱刈(ひしかり)鉱山などは浅熱水性鉱床の代表で、1985年に採鉱が始まって以来、現在でも毎年安定した量の金が採掘されています。
河川などで金が発見され、一攫千金を夢見る採掘者が殺到することをゴールドラッシュといいます。世界的に有名なのが、1848年頃に起こったカリフォルニア・ゴールドラッシュです。この他にニュージーランドやオーストラリア、カナダなどでもゴールドラッシュが起きています。
日本でもゴールドラッシュが起こりました。1899年に北見枝幸(きたみえさし)南部を流れる幌別川上流のパンケナイ川を中心に、何百人もの砂金採取者が全国から集まってきたという記録が残っています。
金を採掘する方法は、山金と川金とでは異なります。山金の場合には「露頭堀り」「ひ押し掘り」「坑道掘り」などが主流。鉱石を採掘して金を取り出すためには、大掛かりな装置が必要です。
これに対して、川底に溜まった川金を採掘するためには、専用の道具を使って川底の土砂から金を採掘する「比重選鉱」という方法が用いられます。比重選鉱で使用する選鉱鍋は子どもや女性でも扱いやすいのが特徴。現在でも、岩手県奥州市にある「歴史公園えさし藤原の郷」では、選鉱鍋を使っての砂金取り体験を開催しています。
川金の採掘方法の中でも、最も古いのが「選鉱鍋」を使った採掘法です。この方法は、古代エジプトでも用いられていました。
砂金の溜まりやすい場所で選鉱鍋を使い、砂金を選別。選鉱鍋はパンニング皿とも呼ばれており、砂金を採掘する目的で今でも市販されています。パンニング皿の直径は25〜40cm前後のものが多く、素材は木製やスチールなどさまざまで、砂金を選別しやすいように、内側が段々になっているものがほとんどです。
渦巻き状の段差(リッフル)が設けられているものは、中央部分に砂金が溜まる仕組みになっています。
選鉱台は、選鉱鍋の規模を大きくしたような道具で、やはり川金の採取に使用されます。金は比重が大きいという特性を利用して、砂金を含んだ土砂を上部から入れて、水で洗い流すと、含まれている砂金が箱の底に残るという仕組みです。
パンニング皿では砂金を選り分けるのに時間がかかりすぎ、しかも少量の砂金しか得られなかったため、仕事を効率化するために登場したのが選鉱台です。オーストラリアやカリフォルニアの鉱山では、木製の選鉱台が使用されていました。
露天掘りというのは、暗くて長いトンネルを掘らずに、地表からそのまま地下の鉱脈をめがけて土を掘っていく方法です。露天掘りの特徴は、大きな体積の土を堀削しなければならないため、大量の鉱山廃棄物が出ること。1トンの土砂から採取できる金の量はわずか1gほどですので、坑道を掘る必要がないとはいえ、効率的な金の採掘方法とはいえないでしょう。
また、環境に与える影響が大きく、露天掘りの前と後では周囲の景色がすっかり変わってしまうというデメリットもあります。露天掘りで金を採掘している地域としては、ペルー南東部のプーノ州などが有名です。
高圧のホースや水の速い流れなどを利用し、金鉱脈の側面や崖になっている部分などに水をかけて土砂を崩し、水路に落として金を採掘するのが水圧堀削法です。水圧掘削法は「水力採鉱」とも呼ばれており、19世紀半ばにカリフォルニアで開発されました。ゴールドラッシュに沸いたカリフォルニアでは、この方法を用いて1880年代までに約340トンの金が採取されたのです。
土砂が崩れた時、金を含んだ層が底の方に沈殿するため、金を集めやすいというのがこの方法のメリットだといえるでしょう。
坑内採鉱法は、金脈があると思われる場所に地表から縦に穴を掘り、そこからさまざまな方角に向けて横に穴を掘っていく方法です。水圧掘削法の代替え案として開発されたもので、「コヨーティング」と呼ばれることもあります。
地表に近く、採掘しやすい条件の金は世界中で採掘され尽くしてしまったため、アフリカなどでは地下3,000mを超える穴を開けないと、金脈にたどり着けないといわれています。このため、比較的浅い穴でも金脈にたどり着けるインドネシアや中国、ペルーなどが新しい金の採掘地として注目を浴びているのです。
硬岩探鉱法は、金が含まれる石英の岩を爆破したあと堀削し、その後流水を使って金のみを選鉱する方法です。金を最も大量に採掘できる方法といわれています。
なお、金を選鉱するために大量の水を確保できない地域では、水銀を使って金を選鉱しています。水銀には金以外の成分を吸収しやすいという特性があるためです。
ただし、硬岩探鉱法では選鉱した後に水分を蒸発させるため、大気汚染などといった問題を引き起こしています。また、水銀と同じような特性を持つヒ素も金を選鉱するのに使われており、環境汚染と作業者に害を及ぼす恐れがあることから硬岩探鉱法を禁止しようという動きが高まっているのです。
含水爆薬は、安全性の高い金の採掘方法として世界中で採用されています。まず採掘場に深さ1.8メートル~3.5メートルの孔を40〜50箇所程度開け、孔の中に1~2kgの含水爆薬を装填。この含水爆薬で鉱床を発破し、砕かれた鉱石を回収します。
手の平サイズに砕かれた岩石は、選別された後に金鉱石が工場に運ばれ、精錬工程の後、純金が取り出されるのです。国内の現役鉱山として金を産出し続けている菱刈鉱山でも、含水爆薬による採掘が行われています。
古来より人々は金の輝きに魅了され、さまざまな採掘方法を編み出してきました。日本の埋蔵量は少ないのですが、オーストラリアなどにはまだ1万トンもの金が眠っているといわれています。ぜひ採掘方法について詳しく知り、金探しに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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